ヴァレ・ド・ラ・マルヌ地区ダムリー村に単一区画を所有し、野心的シャンパーニュ造りで注目を浴びるRM“グートルブ・ブイヨ”を訪問しました。

現当主バスティアンさんから直接うかがった話をお伝えしたいと思います。

ヴァレ・ド・ラ・マルヌの可能性を伝えるドメーヌ

グートルブ・ブイヨは1755年に創業し、1911年から元詰を始めました。現在も家族経営を守り、1980年代からはドミニク・パプルー夫妻によってドメーヌは運営され、2010年に息子であるバスティアンさんが加わりました。

イタリア留学や著名メゾンでの研修、ワインショップでの販売、マーケティングに携わるなど異色の経歴を持つバスティアンさん。これらの経験は常に新しいものへの探究心とグローバルな視点を与えてくれたと彼は語ります。グートルブ・ブイヨのシャンパーニュに感じる洗練されたイメージは、バスティアンさんの柔軟な感性、センスの良さが影響しているように思います。

今回グートルブ・ブイヨを訪れて思い至ったのは"グランクリュ＝高品質、その他＝凡庸"の図式は必ずしも成り立たないという事と、補助品種として認識されがちなムニエにはまだ知り得ないポテンシャルがあるという事実です。

厳格なリュット・レゾネに取り組み、多様な土壌を活かした栽培

ダムリー村は比較的大きな村で、総面積1544haのうち334haをブドウ畑が占めています。多様な土壌を持つこの地に8haを所有。かつてはムニエをメインとしていましたが現在ではピノ・ノワール（25％）、シャルドネ（35％）も栽培しています。平均樹齢は30〜35年。多くを手作業でほぼビオロジックに近いリュット・レゾネ栽培を実践。フランス農水省が定める環境価値重視認定HVEの最も高いレベル3の認証を得ています。

グートルブ・ブイヨの特色の一つがドメーヌの敷地内にある僅か0.3haのクロの存在。バスティアンさんの曽祖父にあたるジュール・グートルブ氏によって植樹されたのが1930年、現時点での樹齢はおよそ90年になるという希少な畑にはムニエとシャルドネが半分ずつ植えられています。

バスティアンさん「最近では技術が進んでどの品種にはどの土壌が合うか科学的に知る事ができます。でも私の曽祖父は自分の経験を頼りにムニエとシャルドネを当時この場所へ植えました。そしてそれが今、素晴らしいキュヴェの元となっているのです。大切な遺産です。」

40年間継ぎ足し続けたリザーヴワインを贅沢に用いた醸造

醸造においても時間をかけて、じっくりと丁寧に工程を進めています。まずプレスには毎回4時間、化学薬品は用いず1日かけて自然にデブルバージュ（不純物を沈殿させる作業）を行います。

その後品種毎に分別し、温度調節付きのタンクで15〜18℃に抑えながらゆっくりとアルコール発酵します。こうする事で繊細な香りが得られるとバスティアンさんは語ります。またマロラクティック発酵をブロックする事でワインにフレッシュさとフィネスを与えているそうです。

ドメーヌの最大の特徴は、ソレラシステムで1980年から代々継ぎ足してきたリザーヴワインです。と言っても毎年50％を使用し、そこに50％の新しいワインを補充する形なのでワインが極端に古くなり過ぎる事はありません。

スタンダードキュヴェではすべてこのソレラのリザーヴワインをベースに醸造しています。品種ごとにストックしていますが、驚くべきは熟成が早いとされるムニエのリザーヴワインです。「上質なムニエを正しく扱えば長期熟成は可能です。」とバスティアンさんのコメント。

グートルブ・ブイヨが持つ特色、魅力はテイスティングの段階で更に実感する事ができました。

→マルヌの可能性、グートルブ・ブイヨの実力を堪能するテイスティングレポートはこちら。