セラーマスター初来日。今注目の3キュヴェをテイスティング。

樽発酵・樽熟成・MLFなしの伝統製法を守り続ける名門“アルフレッド・グラシアン”は、1864年エペルネに創業。セラー・マスターは1905年来ジェジェ家が行い、今日に至るまで100年以上、厳格かつ正確にメゾンの哲学を引き継いでいます。

コロナ禍でなかなか生産者の方にお会いできない日々が続いていましたが、今回ついに4代目のセラー・マスターを務める二コラ・ジェジェ氏が来日！

シャンパーニュ地方で木樽を使って醸造している生産者の特徴を簡単に比較しながら、今おすすめの3キュヴェを試飲させていただきました。

ジェジェ氏による木樽3メゾンの特徴

今も昔も変わらず、途切れることなくずっと醸造で木樽を使い続けているのは3つのメゾンのみで、ニコラ・ジェジェ氏が語るそれぞれの特徴を表にまとめてみました。

いつか贅沢に、この3つのメゾンのシャンパーニュを飲み比べてみたい・・・と思いながら試飲へと移ります。

ブリュットN.V.

約30村のブドウを使い、一番搾り果汁のラ・キュヴェのみを使用。ソレラシステムで継ぎ足しながら熟成させたリザーブワインを40％と贅沢に使うことで、安定した味わいを造り出し、その一貫性のあるスタイルからメゾンの売上の80％を占める、アルフレッド・グラシアンの名刺代わりの1本です。

毎回わずかに比率は変わるものの、シャルドネ50％、ピノ・ノワール25％、ムニエ25％をベースとし、マロラクティック発酵は一切行わず、スタンダード・キュヴェでありながら4年以上の瓶内熟成を経ています。

今回試飲したものは、2017年ベースで、セパージュはシャルドネ54％、ピノ・ノワール24％、ムニエ22％、ドサージュは9g/L。
マロラクティック発酵を行わないため、5年を経てもフレッシュで、今ようやく飲み頃を迎えたような印象を受けます。比較的ドサージュが多めではあるものの、そのおかげで酸がきれいで、コクがあり、クリーミーに仕上がっています。

ミレジメ2012

2012年は厳しい気象条件で、冬が長く、降雨量も多かったため、収量は低めでした。しかし、7月と８月にブドウが完熟し、驚きと荘厳さに溢れ、シャンパーニュ地方ではグランヴィンテージと呼ばれる年になりました。

アルフレッド・グラシアンのヴィンテージ・キュヴェ最大の特徴は、熟成にコルク栓を使用していること。ブリュットとミレジメのボトルの注ぎ口を比べるとよく分かりますが、ブリュットが王冠で瓶熟するのに対し、ヴィンテージ・キュヴェはコルクとアグラフを使って熟成させます。
コルクの通気性と柔軟性が、ワインの長期熟成に必要なごく少量の酸素を与え、アロマが時間をかけて発展し、より繊細で複雑なものになるとされています。

セパージュはシャルドネ65％、ピノ・ノワール2０％、ムニエ15％、ドサージュは8g/L。
ミレジメの規定である3年を大幅に超える9年もの熟成を経てなお、フローラルで柑橘系果実のようなフレッシュさがあり、テクスチャーはクリーミー。
余韻がより長く続き、今飲んでも美味しいが、さらに熟成させてみたいと感じさせる長期熟成ポテンシャルを持つ1本です。

コレクション・メモリー1999

アルフレッド・グラシアンのセラーで20年以上もその時を待ち続けた、時間の守護神であり、最高のヴィンテージの証“コレクション・メモリー”。
最高品質のブドウと長年に渡るオーク樽発酵のノウハウによって生み出された、シャンパーニュ地方の輝かしいヴィンテージへのオマージュです。

セパージュはシャルドネ65％、ピノ・ノワール20％、ムニエ15％で、デゴルジュマンは2022年5月。2000本のみ生産された希少品で、20年経ってもそのフレッシュさは失われることなく、エレガントな酸が口中へと広がり、非常にクリーミー。テクスチャーは絹のようにとてもスムーズで贅沢に仕上がっています。

“20世紀最後のヴィンテージは、質も量も素晴らしかった。ミネラルの香りと力強さを持ち合わせた素晴らしいフレッシュさのあるワインだ。”とニコラ・ジェジェ氏は語ります。

フレッシュでピュア。次々と飲みたくなるようなグルマンなスタイル。

いずれもメゾンの目指すスタイルである、フレッシュさ、まろやかさ、クリーミーさが感じられ、日本食にも合わせやすいグルマンなシャンパーニュ。

フレッシュさ、エレガントな酸、クリーミーさの調和が織りなすアルフレッド・グラシアンのシャンパーニュに魅了されたひとときでした。