希少なキュヴェも含むテイスティングで何よりも感じたのは、コルク熟成がもたらす影響の大きさです。
現在リリースされているキュヴェ5種類の試飲のうち、ブリュット・レゼルヴのみが王冠熟成。フレッシュで澄んだ印象があり、その他のキュヴェは実に複雑。そしてすべてのキュヴェに共通して挙げられたのは酸、ミネラル感を美しく表現したきめ細やかな酒質です。

テイスティング順にご紹介します。

Coteaux Champenois Les Monts Fournois 2016（コトー・シャンプノワ）

所有するモンターニュ・ド・ランス地区プルミエ・クリュ区画のシャルドネから造る貴重なコトー・シャンプノワ。チョーク質土壌がもたらす鮮やかなミネラリティが口の中を満たし、厚みのあるワインとして飲み応えがあります。

Rive Gouche 2015（リヴ・ゴーシュ）

ヴァレ・ド・ラ・マルヌ地区のリヴ・ゴーシュ（左岸の意味）にある貝殻の混じる泥灰質土壌で育ったムニエ100％。平均樹齢は45年、瓶内熟成36ヶ月。実際に畑に混じっていた貝殻を見せていただきました。ネクタリンや杏などを思わせる熟した果実の風味にスモーキーなニュアンスが加わり、複雑で奥行きがあります。力強さと繊細さの加減が見事。ドサージュ3ｇ/L。

Les Beaux Regards 2015（レ・ボー・ホガード）

リュード村にある区画”Beaux Regards"のシャルドネ100％。平均樹齢50年、瓶内熟成36ヶ月。レモンや白い花のなどブラン・ド・ブランらしいアロマから、バター、アーモンドなどのヒントが重なり、香りの豊かさに圧倒されます。上等なブルゴーニュ・ワインのようなスタイルで、すでに完成された熟成感を堪能しつつもエイジングによる変化も気になる1本でした。 ドサージュ3ｇ/L。

Campania Remensis Rosé 2014 （カンパニア・レメンシス・ロゼ）

60%ピノ・ノワール、30％シャルドネ、5％ムニエ+5％コトー・シャンプノワ・ルージュ。瓶内熟成36ヶ月。 チェリーやストロベリーの華やかなアロマにタバコ、ドライフラワー、オレンジピールなどの香りが複雑さを与えます。豊かなボディと均衡を保つテンションが感じられ、愛らしくも凛とした印象。余韻にしっかりと感じるミネラル感がベレッシュならではのエレガントさを残します。 ドサージュ3.5ｇ/L。

Brut Réserve N.V.（ブリュット・レゼルヴ）

35％シャルドネ、30％ピノ・ノワール、35％ムニエ+35％リザーヴワイン。瓶内熟成24〜36ヶ月。ドメーヌの顔であるスタンダード・キュヴェをミレジメの後に試飲する事で、コルク熟成と王冠熟成の違いを明確に感じ取る事が出来ました。ピュアなフルーツアロマとチョーキーなニュアンス。クランベリーや杏などの新鮮な果実味、活き活きとした酸とミネラル感のすべてにおいて絶妙なバランスが取れて いて、余韻も綺麗に続きます。 ドサージュ7ｇ/L。

ラファエルさん「ブリュット・レゼルヴは最もバランスが良く、あらゆる食事とマリアージュができますよ。」

非売品の古代品種キュヴェ

最後の試飲はラファエルさんのご好意で特別に出していただいた非売品で、古代品種であるプティ・メリエとアルバンヌをブレンドした希少なシャンパーニュ。1樽分だけ仕込んだ実験的なキュヴェは、家族用だそうです。ヴィンテージは2007年。どちらの品種も栽培が難しい為、シャルドネへの植え替えが進み、今では生産量が非常に少なくなっています。柑橘系の酸が心地良く、ほんのりベジタルな風味がフレッシュでクセになる味わいです。

手法に固執しない素直に美味しいシャンパーニュ

ラファエルさんが常に語っていたのは”品質”へのこだわりでした。ノン・ドサージュや低ドサージュに固執するわけではなく、リザーヴワインの年数の長さを誇っているわけでもない。数値はあくまでも数値でしかなく、全てはより良いシャンパーニュを造る為のプロセスに過ぎないのだと言う強い思いを感じました。

「味わいの調整の為に微量のドサージュをしています。私達はテイスティングをしながら味わいのバランスを考慮してドサージュの量を決めているのです。」

シャンパーニュの伝統と革新を体現する唯一無二のドメーヌ、ベレッシュ・エ・フィス。素直に美味しいと思う感覚を大切にしている彼らのキュヴェは豊かでありながら、緻密な美しさに満ちています。