ゴッセ訪問レポート

ランスから南に車で30分。モエ・エ・シャンドン、ポル・ロジェなどの名門メゾンが並ぶ小さな町エペルネ。その中でもシャンパーニュで最も古い歴史を持つメゾンのひとつ“ゴッセ”を訪問。一般向けには非公開の醸造所をご紹介します。

“ノン”マロラクティックの代名詞ゴッセ

まず、ゴッセといえばマロラクティック発酵（MLF）をしない生産者の代名詞ともいえる存在です。MLFを行わない事で、ブドウ本来が持つリンゴ酸を壊すことなくピュアな味わいを保つ事が出来ます。MLFを止められるのは高い技術力を持つわずかな生産者に限られます。

そして、家族経営のメゾンである事。現在はコアントロー家の経営によってゴッセのスタイルが守られています。経営者が頻繁に変わるメゾンでは一貫した味わいのスタイルを保つ事は出来ません。

多様なブドウのアッサンブラージュを得意とするメゾン

ゴッセのスタイルにとって重要な事はアッサンブラージュ（調合）です。70の村、200軒の栽培家からブドウを購入します。70の村それぞれの個性を表すように個別に醸造。100以上のステンレスタンクに分かれます。バクテリアや細菌を発生させずにノンマロラクティックを造るためステンレスタンクが選ばれています。

初公開ゴッセのアッサンブラージュ

ゴッセスタイルの要、アッサンブラージュの工程をご紹介します。100種類の原酒から一つのシャンパーニュを造っていきます。その原酒の個性がゴッセのスタイルにどのように貢献してくれるか、それぞれの個性を見極める事が大切です。

例えばクラマン村のシャルドネの原酒をテイスティングすると優れた余韻の長さが感じられます。これを調合することで、他の原酒も引っ張られてシャンパーニュの余韻が伸びると言います。骨格や余韻、時には歪みの要素をあえて合わせる事でゴッセの一貫性を保つ事が出来ます。

ロゼワインのアッサンブラージュは、最後に赤ワインを調合します。シャンパーニュの味わいは白ワインで完成させて、ロゼとしての香りを造る調整を赤ワインで行うためです。赤ワインを入れる事で香りが全く変わる事が実感できます。

原酒全てを無理に使う必要はありません。一番良い物だけを使い、残ったものは他の生産者に売ってしまいます。

アッサンブラージュの工程でシャンパーニュの味わいの全てが決まりますが、面白くなるのは瓶内熟成からだと言います。澱と共に熟成することで、味の重さが加わり、旨味・繊細さが現れます。

長期熟成を実現する巨大カーヴ

20m地下のカーヴ（貯蔵庫）は石灰を掘って出来た巨大な空間です。建築材料や防空壕のために手作業で掘られています。このカーヴで600万本を貯蔵していますが、一般的なメゾンのおよそ4倍の本数となります。グランレゼルヴの平均熟成は60ヶ月と膨大な費用がかかります。しかしMLF無しの強い酸味を和らげるために熟成は必要です。ゴッセスタイルを最も良い状態で届けるためのこだわりが感じられます。そして、このカーヴは長期熟成に必要な3つの要素全てを満たしています。年間を通して12℃、振動が無いこと、太陽などの有害な光が無いことです。