先日、エグリ・ウーリエの新リリースキュヴェのお披露目会に参加させていただきました。
著名なワインガイド誌やロバート・パーカー氏から絶賛されているエグリ・ウーリエですが、今回のテイスティングで改めてのその実力の高さを伺い知る事が出来ました。

ストイックな職人気質の現当主フランシス・エグリ氏の寡黙な印象とは対照的に彼の生み出すシャンパーニュ達はとても雄弁に語り、その華やかさで飲む者を圧倒します。美しい芸術品のようなスタイルで口に含んだ瞬間から魅了され、恍惚としてしまいました。

この日のテイスティングで最も注目されていたのが、ミレジム2008とコトー・シャンプノワ2017。
2020年度の“ワイン・アドボケイト”誌でRMとして初めての100点満点を獲得したエポックメーキングなミレジム2008は、既に市場では完売しています。今回は輸入元秘蔵の希少な1本を試飲させていただく事が出来ました。

グランクリュ ブリュット ミレジム 2008（完売品）

口に含んだ瞬間からウットリするような魅惑的な逸品。熟した果実、甘い花の香りにプラリネや焼き菓子のニュアンス。ミネラリーな要素も感じられ、複雑で深遠な世界に瞬く間に引き込まれます。どの角度から味わっても完璧でまさに球体のイメージ。すぐに味わってもエイジングさせても素晴らしいであろうこのシャンパーニュがもう手に入らない事が残念です。

コトー・シャンプノワ アンボネイ・ルージュ 2017

シャンパーニュ地方で造られる希少な赤ワイン。
フランスのワイン産地として北限にあるので通常は酸が高いのがコトー・シャンプノワでよく見られる特徴ですが、エグリ・ウーリエではそれを一切感じず、過去に存在したありとあらゆるコトー・シャンプノワのイメージを払拭するかのような傑出した出来栄えです。上質なブルゴーニュワインかと見紛う佇まいで、輸入元資料にあるシャンボール・ミュジニーの“レ・ザムルーズ”を彷彿とさせる、の文言にも思わず納得してしまいます。香り高く、シルキーでフィネス溢れる味わいは、グラン・ヴァンにも引けを取らない素晴らしい仕上がりです。

全てのキュヴェに共通して言えるのは球体を連想させる完璧なまでのバランスです。アタックから全方向に広がる味わいは力強さと緻密さに満ちています。凝縮感と凛とした気品を併せ持ち、エグリ・ウーリエさえあれば他のワインは必要では無いのではないかと思うほどです。

ブリュット・トラディション グラン・クリュ

スタンダード品。一口目からしっかりと美味しく、余韻も長い。ピノ・ノワールの力強さが中心にありながら、シャルドネがもたらす細やかさが全体をエレガントな印象にしています。

レ・ヴィーニュ・ヴリニィ プルミエ・クリュ

ムニエ100％。補助的な印象の強いムニエを主役にしたキュヴェで、良い意味で予想を裏切ります。ムニエらしい果実味に負けないくらいのミネラル感があり、非常にフレッシュかつワインとしての厚みを感じます。

グラン・クリュ V.P. エクストラ・ブリュット

ヴィンテージ表記の無いシャンパーニュの法定熟成期間が15カ月以上と定められているのに対し、72〜84カ月も熟成させている贅沢なキュヴェです。長期熟成により余分な力が抜けて悠然とした印象。純粋な果実味と熟成由来の複雑さが不思議と溶け合い、均衡を保っています。

グラン・クリュ ロゼ ブリュット

繊細な色調ながらベリー系果実の凝縮感がベースにきちんと感じられ、酸とミネラル感が上品な繊細さを醸し出しています。他のロゼシャンパーニュに見られるチャーミングさよりは気品に満ちたスタイルです。

年々希少性が増し、手の届きにくいシャンパーニュになりつつあるエグリ・ウーリエ。その高貴なイメージに尻込みしてしまいそうになりますが、極論すれば“もはやグランヴァンである”と言えるのではないでしょうか？
大切なディナーでプレスティージュシャンパーニュやブルゴーニュワインの選択に迷った際は是非エグリ・ウーリエを選んでいただきたいと思うのです。この素晴らしいシャンパーニュにはその価値があると確信しています。