クリュッグと同じく伝統の木樽発酵・木樽熟成のみにこだわってシャンパーニュを造り続ける名門メゾンが「アルフレッド・グラシアン」

今回は、最高経営責任者であるオリヴィエ・デュプレ氏が来日。
アルフレッド・グラシアンの特徴の紹介に加えて、伝統製法にこだわる理由を語って頂きました。

アルフレッド・グラシアンにおける最重要人物

アルフレッド・グラシアンのセラー・マスターは、1905年以来ジェジェ家が行っています。

我々アルフレッド・グラシアンにおける最重要人物は醸造長であるニコラ・ジェジェ氏です。
何故かと言うと歴史的に見ても最後の世代である、完全な樽発酵でシャンパーニュを製造するための高い実力を備えているからです。

そして、往々にして忘れられがちな事ですが、いいワインはいいブドウからできるという当たり前のことに立ち返ってパートナーのニコラとワイン造りに励んでいます。

樽発酵にこだわる理由

樽発酵を続ける最も大きな理由がヨーロッパのマーケットにおける需要です。
高級志向を持つ富裕層に常に愛され続けている味わいだからです。

最初の発酵、ジュースからアルコールに変える段階から樽を用いています。
そのためにふくよかな味わいになります。

味わいのバランスを取るためにはブドウ自体の酸がしっかりないといけませんし、上質なブドウでなければ樽発酵に耐えられません。

また、樽発酵をする事により酸化が進みやすい状態での発酵となります。
そのため必然的にSO2の使用量が最低限は必要になります。

酸化を防ぐという意味と、より還元的な風味を付けたいというイメージからSO2を発酵段階でも加えます。
基本的にはシャンパーニュにおける平均値の約半分である60mgほど加えます。

そして新樽は基本的に使用しません。
シャブリの生産者「シャブリ・ジェンヌ」から4,5年落ちの樽を購入して発酵させています。

2007年からニコラが醸造に携わっていますが、最も大きな変革がセカンドプレスを使用せず最もピュアな果汁のみを樽発酵させるという手法になったことです。

長期熟成に耐える鮮烈な酸のスタイル

次の特徴としては、マロクティック発酵はしない、させないという点です。

一度もマロラクティック発酵をせずに造り続けてきたことが、100年を超える伝統となりアルフレッド・グラシアンのスタイルとして確立されています。

マロラクティック発酵を採用しない理由はアルフレッド・グラシアンのスタイルが酸にあるからです。
マロラクティック前の強烈な酸の印象がメゾンのスタイルの象徴であり、それにより長期熟成ができるワインに仕上がります。

バレルを保存しているセラーは12度程に管理されており、この温度がセラーに存在している細菌やバクテリアを活動させない最も好ましい温度であるためです。

以前に、20年ほど熟成された1996年ヴィンテージをテイスティングしたところ強烈な酸味がまだ生きており、マロラクティック発酵をしていれば得られなかった結果だと考えています。

ノンヴィンテージのシャンパーニュでも少なくとも20年の熟成が可能で味わいが向上していくと考えています。

樽発酵をおこなうための良質なブドウの確保

樽発酵に耐えうる上質なブドウを得ることが基本にあります。
62％以上が特級畑から得られるブドウであるため、なんの問題なく樽発酵を行うことができます。

しかし、シャンパーニュ業界において良質なブドウを得ることは戦争であり、皆が良いブドウを求めるため自分たちの畑は生命線です。

栽培を行っている農家との関係性は非常に重要です。

発酵後熟成させるバレルごとに畑の名前や農家の名前などが記載されており、訪れた農家にテイスティングしてもらいディベートしたりしています。
仮に悪いブドウがあってもバレルごとに分けられている為に他のワインへ影響することがありません。

また管理者として、農家に飲んでもらい質の悪さ、自分たちが求める質の高さを説明することができます。

ですが、実際のところは全く心配していません。
それはガストンの時代からワイナリーと共に農家も受け継がれているため、ビジネスパートナーとして素晴らしい関係性を構築しているからです。

木樽による伝統製法と、酸を特徴とするスタイル、何より木樽発酵に耐えうる最高のブドウが共鳴することで、唯一無二の味わいとなることが分かりました。
木樽による空気との触れ合いが生み出す"旨味のある柔らかな酸”を堪能できる数少ない生産者です。